今さら聞けない《助動詞》のキホン【大人のやりなおし中学英文法 vol.6】
英語の注目度と必要性の高まりに呼応して学習者の方々の勉強熱も高まっています。
そんな中で、いきなりTOEIC対策問題集を解いてみたり、はじめから「実践」をうたったライティングやスピーキング教材に手を出してみたりと、英語の基礎基本を置き去りにした学習をしてしまっていませんか?
中学英語は、英語学習の根幹をなす最も重要な基礎基本を教えてくれるものです。中学英語を理解することなく、より高度な英語を理解したり技能として身に付けたりすることは不可能と言ってもいいでしょう。
それだけ重要な中学英語を基礎基本から徹底解説する連載【大人のやりなおし中学英文法】。今回は「助動詞の使い方」についてご説明します。
はじめに
現在形や過去形は、主語がどういう状態である/であったのか、どのようなことをする/したのかという事実を述べるときに使う動詞の形だと学習してきました。
たとえば、
- 【例】
- John teaches science.
は「ジョンは科学を教えます」という意味で、ジョンが日常的に行っている教えるという行動を事実として伝えています。
このように事実をありのままに伝えることはもちろん大切なことですが、一方で「ジョンが科学を教えるべきだ」という具合に話し手である私たち自身がそのことについてどのように思っているか、を伝えたいと思うこともよくあります。
今回は、この「~すべき」のように話し手の主観的な思いや気持ちを伝えたい場合に、どのように表現すればよいかということについてご説明していきます。
※なお、中学の学習内容と切り離さない方が都合が良いと判断したものについては、高校英語の学習内容も含んで解説しています。
1. 思いを伝える助動詞

先ほどの「~すべき」のように、話し手が思っていることを伝えるための言葉を助動詞と呼びます。
助動詞は<助動詞+動詞の原形>という組み合わせで使い、動詞の意味に対する話し手の思いや判断などを表します。
助動詞には主に以下のようなものがあります。
これらのうちから適切な助動詞を使って、冒頭の例文「ジョンが科学を教えるべきだ」を英語に直すとどのようになるでしょうか?
- 【例】
- John should teach science.
となるわけですね。
思いを運ぶ大切な言葉、それが助動詞です。
2. 助動詞「can」

ではここから1つずつ見ていきましょう。
まずは “can” です。
基本的な意味は「~できる」で、「能力」「可能」を表す
- 【例】
-
I can play the guitar.
「私はギターを弾くことができます」(能力)
※これは「弾こうと思えば弾くことができる」ことを伝えています。 - You can buy the book at that store.
「その本はあのお店で買うことができますよ」(可能)
「~できない」と否定的な意味にする場合には “not” を用い、“can’t” または “cannot” とします。よほど “not” を強調したい場合を除いて、“can” と “not” は切り離さずにくっつけます。
- 【例】
-
I can’t read it without glasses.
「メガネがなければそれは読めません」
「~できますか?」と尋ねる場合には主語と助動詞を入れ替えます。
- 【例】
-
Can you read Japanese?
「日本語は読めますか?」
“can” を使って「~できますか?」と尋ねる場合、相手の能力を直接的に問うことになるため、「あなたに~できるの?」というニュアンスになり、失礼に思われることもあります。
ですから、たとえば “Can you speak English?(英語が話せますか?)” と尋ねるよりも、日常的な行為として “Do you speak English?” と相手が普段から英語を話す人であるかどうかと、現在形で尋ねた方が無難である場合もあります。
「許可」「依頼」「申し出」などを表す
「能力」「可能」から発展して次のようないろいろな場面で使うこともできます。
- 【例】
-
You can use my phone.
「私の電話使ってもいいよ」(許可) - You cannot wear your shoes here.
「ここでは靴を履いていてはいけません」(不許可) - Can I try this on?
「これを試着してみてもいいですか?」(許可を求める)
※ "try A on / try on A"=「Aを試着する」 - Can you show me the way to the station?
「駅までの行き方を教えてもらえますか?」(依頼) - Can I help you?
「お手伝いしましょうか?」(申し出)
なお、“can” の過去形 “could” を用いることで、より丁寧なニュアンスで許可を求めたり依頼したりすることができます。
- 【例】
-
Could you pass me the salt?
「塩を取っていただけませんか?」
これは過去形を用いることで、相手との心理的な距離感が生まれ押しつけがましさが軽減されるためで、決して過去のことを表しているわけではありません。
「~があり得る」「~かもしれない」という「可能性」「推量」を表す
- 【例】
-
Sometimes accidents can happen.
「ときに事故は起こり得るものだよ」(可能性)
逆に “cannot” は可能性を否定することから「あり得ない」という「確信」の意味で使われることもあります。
- 【例】
-
That cannot be true.
「それが本当だなんてあり得ないよ」(確信) - That could be true.
「それは本当かもしれないね」(推量) - ※ここでの “could” は話し手がその場で「そうかもしれない」と思ったことを表しています。過去のことに言及しているわけではありません。
このように “can” は多くの文脈で使われます。
慣れないうちは大変に感じるかもしれませんが、「能力」と「可能」の基本的意味を中心に意味の広がりをイメージしてみてください。
「能力」を表す “be able to”
“can” の代わりに “be able to” という表現を使って「~できる」という能力を表すことができます。
- 【例】
-
I am able to speak three languages.
「私は3か国語話すことができます」
“be able to” は過去に「(実際に)~できた」ことを表したり、“will” などその他の助動詞とともに使うこともできます。
- 【例】
-
I was able to get the ticket.
「そのチケットを手に入れることができたよ」
ちなみに過去形の “could” を過去の文脈で用いると、「能力があった・可能だった」を表します。
- 【例】
-
I could swim five kilometers ten years ago.
「10年前には5キロ泳げたんだ」 - You will be able to find a new job.
「君はきっと新しい仕事を見つけることができるよ」
助動詞は二つ以上同時に用いることができないため、“will can” とはなりません。
3. 助動詞「may」

次は “may” です。
基本的な意味は「~してもよい」で、「許可」を表す
- 【例】
-
You may use this room.
「この部屋を使っても構いません」(許可) - You may not enter this room.
「この部屋に入ってはいけません」(不許可) - May I come in?
「入ってもよろしいですか?」(許可を求める)
このように “may” も “can” と同様に許可を与えたり求めたりすることのできる助動詞ですが、“may” の方がより上下関係や権限の有無を意識させるためのニュアンスになります。
「~かもしれない」という「推量」を表す
- 【例】
-
They may be innocent.
「彼らは無実かもしれない」 - He might know the answer.
「彼なら答えを知っているかもしれない」
過去形 “might” も同様に推量を表します。一般に “may” よりも確信度合いが低いことを表しますが、実際には “may” と大差がない場合も少なくありません。また、過去のことについて言及しているわけでもありません。
- 【例】
- He may not be a bad person.
「彼は悪い人間じゃないのかもしれない」
“may” の持つ「してもよい」と「かもしれない」の二つの意味には一見つながりが見当たりません。
しかし、「してもよい」とは「妨げるものはないから自由にすればいい」という意味で、この「妨げるものがない」という意味が「可能性を閉ざすものがない」という解釈に結びつき、「可能性がありえる」つまり「かもしれない」という意味へと発展したわけです。
4. 助動詞「must」

続いて “must” です。
基本的な意味は「~しなければならない」で、「義務」や「必要」を表す
- 【例】
-
You must do your homework first.
「まず宿題をやらなければなりませんよ」 - Must I wear this tie?
「このネクタイを締めなければなりませんか?」
このように “must” は「義務」「必要」をまず表します。
親しい間柄の人同士では、「しなければならない」が転じて「絶対にするべきだ」、「ぜひしてほしい」という具合に強いおススメの気持ちを表すこともあります。
- 【例】
-
You must visit Osaka!
「ぜひ大阪を訪れて!」
非常に強制力の強い “must” ですが、その強さから否定文では「~してはいけない」という「禁止」の意味になります。
- 【例】
-
You must not drive. You are only fifteen.
「運転してはいけません。君はまだ15歳なんだから」
ほぼ同じ意味を表す “have to”
“have to” は “must” とほぼ同じ意味を表す重要な表現です。
“have” は「ハf」のようにfの音で発音します。三単現では “has to” となります。
- 【例】
-
We have to get there by eight o’clock.
「私たちは8時までに到着しなければなりません」 - Do I have to read all the pages?
「全ページ読まなければなりませんか?」
「過去における義務・必要」は “had to”
“must” は過去を表すことができないため、「~しなければならなかった」と「過去における義務」を表したい場合には次のように “had to” を用います。
- 【例】
-
We had to wait outside.
「私たちは外で待っていなければなりませんでした」
“have to” の否定形は「必要が無い」
- 【例】
-
You don’t have to lock the door.
「ドアは施錠する必要はありません」 - I didn’t have to finish my report so early.
「そんなに早くレポートを仕上げる必要はありませんでした」
このように “have to” の否定形は「必要が無い」を表し、「してはいけない」の意味にはなりません。
その他の助動詞と一緒に使える “have to”
“be able to” のように、その他の助動詞と一緒に使えるのも “have to” の特徴です。
- 【例】
-
We’ll have to clean all the mess tomorrow.
「明日は散らかったもの全部掃除しなきゃいけないね」
増える “have to”、減る “must”
ところで、“have to” と “must” のいずれであっても使えそうなケースでは、どちらがより頻繁に使われているのでしょうか?
実は “have to” の方が圧倒的に上回っていると言われています。
「~しなければならない」という日本語を思い浮かべるとき、真面目に勉強した人ほど “must” が真っ先に思い浮かぶものだと思います。
ですが “must” は相手に対して命令的な響きがあり、より客観的な視点に立って「状況的に~しなければならない」と述べている “have to” の方が一歩引いた感じが伝わるため好まれるのです。
「~に違いない」という「確信」を表す
強制力のある “must” はある状況を指して「~でなければならない」→「~に違いない」という「確信」の意味で使われることもあります。
- 【例】
-
He must be sick today.
「彼は今日は体調不良に違いない」 - You must be joking.
「冗談だろ」(「あなたは冗談を言っているに違いない」)
ちなみに “must” はこの「~に違いない」の意味で使うことの方が日常的には多くあります。
また、“have to” も同じ意味で使うことができますが、こちらの方が何らかの根拠に基づいた客観的な視点に立っているニュアンスです。
- 【例】
-
He has to be stuck in traffic now.
「彼は今渋滞につかまっているに違いない」
5. 助動詞「should」

次は “should” です。
基本的な意味は「~すべき」で、「当然」を表す
“must” のような強制的なニュアンスではなく、「~した方がいい」くらいの意味でアドバイスを与えるようなときに使うことが多くあります。
- 【例】
-
You should go see a doctor.
「お医者さんに診てもらうべきだよ」 - You should finish your homework before your mother gets angry.
「お母さんに怒られる前に宿題終わらせといた方がいいよ」
ほぼ同じ意味を表す “ought to”
“should” とほぼ同じ意味を表す表現に “ought to” があります。
- 【例】
-
You ought to stay inside.
「屋内にいるべきだよ」
否定文では “ought not to” という語順になることに注意が必要です。
- 【例】
-
You ought not to say such a rude thing.
「そんな無礼なことは言うべきではありません」
“ought to” は “should” よりも強めのニュアンスがあります。ただアメリカ英語ではあまり使われることはありません。
「~なはずだ」という「推測」を表す
- 【例】
-
This should be the correct answer.
「これが正答のはずだよ」 - It shouldn’t be raining there.
「そこは雨は降っていないはずです」
“ought to” も同様に使うことができますが、普通は “should” を使います。
- 【例】
- The problem ought to be difficult for him.
「その問題は彼には難しいはずだよ」
6. 助動詞「will」

最後に “will” です。
基本的な意味は「~するつもりだ」で、「意志」を表す
前回解説した未来を表す “will” がこれにあたります。
- 【例】
-
I will be back in ten minutes.
「10分で戻ってきます」
「意志」の “will” は否定文ではこのように「どうしても~しない」という「拒絶」を表すこともあります。
- 【例】
-
She won’t eat anything.
「彼女はまるで何も食べようとしないんだ」
疑問文では「~してもらえますか?」と「依頼」を表すことができます。
- 【例】
-
Will you help me?
「手伝ってもらえますか?」(依頼)
“can” のときと同様、過去形 “would” を用いることで丁寧なニュアンスにすることもできます。
- 【例】
-
Would you show me your passport?
「パスポートを見せていただけますか?」
“will” を用いた「依頼」は、相手の意志に直接問いかけ、「してほしいんだけど」という具合に命令的なニュアンスになることがあります。
その場合、「状況的に可能かどうか」を問いかける “Can/Could you ~?” の方が相手に配慮したニュアンスとして好まれることもあります。
「きっと~だ」という「推定」を表す
- 【例】
-
(玄関がノックされて)
That will be him.
「きっと彼だ」
このように来訪者がやってくることが事前に想定されているような、状況を予測できる場面でかなり確信度の高い「推定」を表すことができます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
高校英語の内容に踏み込んだ部分もありますが、どれも英語に欠かせない重要な助動詞ばかりです。
それぞれの助動詞に複数の意味があって難しい、と感じられる方が多いのですが、たとえば “can” の「能力」「可能」や “will” の「意志」といった基本的な意味をまずは押さえて、その他の意味での使い方もイメージすると理解の手助けになると思います。“must” の持つ強制的なニュアンスなどもそうですね。
これなら自分にも使えそうだと思える表現から使い始めて、徐々に慣れていくのも良いと思います。
焦らずに少しずつ身に付けられるように取り組んでみてください。